北海道

羊蹄山

羊蹄山(ようていざん)

画像:Wikipedia(CC BY-SA)

ニセコの稜線から真正面に見える、北海道で最も整った富士型の独立峰。麓の畑から海抜0m近くを起点に、1,898mのお鉢縁まで一気に登る山。

蝦夷富士、ニセコの正面に立つ山

羊蹄山は北海道後志地方、倶知安町・ニセコ町・真狩村・京極町・喜茂別町の5町村にまたがる標高1,898mの成層火山である。ほぼ完璧な円錐形の独立峰として、「蝦夷富士」の異名で全国に知られる。ニセコ連峰の各スキー場から見上げる羊蹄山の姿は、富士山に見慣れた人にもどこか別の重さを感じさせる構図を持ち、写真集や観光ポスターの題材として繰り返し扱われてきた。深田久弥の日本百名山ではこの山を「群を抜く独立峰の見事さ」と評している。

羊蹄山ルート、四方からの登り口

羊蹄山ルートは主に4本あり、4町村がそれぞれ登山口を持つ。倶知安(比羅夫)コースは北西側、標高約330mから登り約5時間半、下り約4時間。最も登山者が多く、ニセコの宿から最もアクセスしやすい。真狩コースは南側、標高約400mから登り約5時間、下り約3時間半。コース全体が比較的緩やかで、初めて羊蹄山に登る人に勧められる構成だ。

東側の京極コースは標高約350mから登り約5時間、急登が連続するため健脚向け。南東側の喜茂別コースは標高約350mから登り約4時間半と最短だが、登山口までの林道が長く、看板も少ないため迷いやすい。いずれのルートも標高差は1,500m以上、海抜近くから1,898mまでをほぼ一直線で登る山という点で、独立峰の本質を体感できる構成になっている。山頂のお鉢縁で全ルートが合流し、お鉢めぐりで最高点(最北の岩稜)に到達する。

羊蹄山アクセスと倶知安からのリズム

羊蹄山アクセスは、新千歳空港または札幌からニセコ・倶知安方面へ向かうのが基本になる。新千歳空港からJR千歳線・函館本線で倶知安駅まで約2時間40分(小樽で乗り換え)、または新千歳空港からニセコ・倶知安行きのリゾートライナーバスで約3時間。倶知安駅から比羅夫登山口まではタクシーで約20分。真狩コースを使う場合は札幌駅前バスターミナルから道南バス洞爺湖温泉行きで「真狩中央」下車後、登山口までタクシーで約20分。

マイカーの場合は新千歳空港からニセコまで約2時間半、各登山口まで札幌方面から3時間前後。各登山口には無料駐車場(30〜50台)が整備されているが、夏の登山シーズンには7時前に満車になることもある。前泊なら倶知安・ニセコ・真狩の温泉宿が選択肢になり、ニセコ昆布温泉や羊蹄山麓の真狩温泉は登山と組み合わせやすい立地にある。

標高差1,500m、羊蹄山の体力的な顔

羊蹄山は富士山型の整った姿から「軽い山」に見えがちだが、実際には標高差約1,500m・コースタイム往復9時間以上という、北海道百名山のなかでも体力的にはトップクラスの山だ。富士山と同じ独立峰ゆえに、登山道は急登が単調に続き、樹林帯から森林限界、火山礫の急斜面、お鉢縁の岩稜と、休む踊り場が少ない。八合目を過ぎてからの最後の300mが特に厳しく、ここでバテる登山者が多い。

九合目には羊蹄山避難小屋(管理人常駐期間は7月から9月)があり、テント場と寝具なしの宿泊が可能(協力金制)。日帰り往復が標準だが、避難小屋で前泊して翌朝のお鉢めぐりで日の出を迎える1泊2日の構成も多くの登山者に選ばれている。北海道の独立峰の山頂で迎える朝の光は、本州の3,000m峰とは異なる、海と平野が直接見えるスケールを持っている。

羊蹄山の装備と服装、季節

羊蹄山の装備は、北海道の独立峰を歩く前提で組む。緯度43度の標高1,900m稜線は、本州の同標高帯より気温が低く、夏の最盛期でも山頂気温は10℃前後、強風時の体感は5℃を下回る。化繊またはメリノの長袖、フリースか化繊インサレーション中間着、防水透湿のレインジャケットとレインパンツ、薄手の手袋、ニット帽までを基本セットとする。靴はくるぶしを覆うトレッキングシューズが必須で、特に下山時の砂礫斜面はソールのグリップが効くものを選びたい。

羊蹄山の服装は、季節幅を広めに考える。羊蹄山の時期は6月下旬から10月中旬まで。最盛期は7月から9月で、9月下旬から10月初旬の紅葉が稜線を染める時期は短いがインパクトが強い。10月後半に初冠雪、11月以降は冬山。冬の羊蹄山はバックカントリースキーの世界的な聖地として知られ、ニセコ周辺からのアクセスでパウダースノーのスキー対象となるが、夏のハイキングの延長で考える範疇にはない。水場は登山道上に存在せず、九合目避難小屋にも水場はないため、最低2.5〜3Lを担ぐ。羊蹄山の名水は麓のふきだし公園に湧くが、山の中では水を補給する手段がないことを覚悟して計画する。

ヒグマ目撃情報は羊蹄山では他の北海道百名山と比べて少ないが、ゼロではない。各登山口の登山届ポストに最新情報が掲示されており、熊鈴・熊スプレーの携行を推奨する自治体もある。北海道の山に登る以上、装備のなかに熊対策を組み込んでおくのが基本になる。

お鉢めぐり、火口の縁を歩く

羊蹄山の山頂部は、直径約700m・深さ約200mの火口を抱える広いお鉢縁になっている。最高点(標高1,898m)はお鉢縁の北側にあり、登山口から最初に到達する九合目分岐から時計回りで約30分、反時計回りで約1時間。お鉢めぐり一周は約1時間半、距離2.5kmで、稜線の風が強い日は無理せず最高点を踏んで往復するのが現実的だ。火口の中には小さな池(父釜・母釜・子釜)が点在し、火山地形の細かさが上から見下ろせる。

山頂からは、北にニセコ連峰のアンヌプリ・イワオヌプリ・チセヌプリ、北西に積丹半島と日本海、南東に洞爺湖と有珠山・昭和新山、晴れていれば遠くに大雪山系の旭岳まで見渡せる。下山後の温泉は真狩村のユースホステル「ニトヌプリ」併設の真狩温泉や、ニセコ連峰の昆布温泉が選ばれる。次に北海道の山を続けるなら、登山道で見えた有珠山・昭和新山の火山地形、あるいはニセコ連峰のアンヌプリへの縦走が自然な選択肢になる。羊蹄山に登り終えた後、ニセコの宿の窓から再びこの山を見たとき、「あの円錐の中に火口があった」という事実が、見え方を確実に変えている。

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