北海道

旭岳

旭岳(あさひだけ)

画像:Wikipedia(CC BY-SA)

北海道最高峰、そして日本で最も広い国立公園の中心に立つ活火山。ロープウェイで始まり、火山ガスと残雪を抜けて、北海道の屋根に至る一本。

北海道の屋根、大雪山の主峰

旭岳は北海道中央部に広がる大雪山国立公園の主峰で、標高2,291mは北海道の最高点である。大雪山は単独峰ではなく、旭岳・北鎮岳・白雲岳・忠別岳・トムラウシ山などからなる火山群の総称で、国立公園としての面積は約23万haと日本最大、「神々の遊ぶ庭」(カムイミンタラ)の名で呼ばれてきた。旭岳はそのなかでもっとも高く、現在も気象庁の常時観測対象となる活火山で、山腹の地獄谷から大量の水蒸気と硫黄ガスが立ち上る姿は遠目にもよく目立つ。深田久弥の日本百名山では、北海道勢の中で利尻山に次いで早い順序で言及されている。

姿見ロープウェイから始まる旭岳アクセス

旭岳アクセスの特徴は、登山口までロープウェイで一気に標高1,600mまで上がれる点にある。旭岳温泉から旭岳ロープウェイで姿見駅(標高1,600m)へ約10分。新千歳空港・札幌からは特急ライラックで旭川駅、そこから旭川電気軌道バス「いで湯号」で旭岳温泉まで約1時間20分という公共交通ルートが整備されており、北海道の百名山としては群を抜いてアクセスしやすい。

姿見駅周辺には姿見の池を周回する遊歩道(散策路)が整備されており、ここまでは観光客でも歩ける。登山道はこの周回路から分岐して、地獄谷の西側を巻きながら山頂へ向かう。山頂までは姿見駅から登り約2時間半、下り約1時間半。距離は短いが、標高2,000mを超える稜線の風と、夏でも残る雪渓・火山ガスの存在が、観光延長の散歩ではないことを歩き始めて10分で思い知らせる。

旭岳ルートと縦走の入口

旭岳ルートは姿見からの往復が最も一般的だが、大雪山系全体の縦走起点としての性格も強い。山頂を越えて北東へ進めば、間宮岳・北鎮岳を経て黒岳に至る縦走路(コースタイム約6時間)、南東へ進めば白雲岳・忠別岳・五色岳を経てトムラウシ山に至る大縦走路(2泊3日〜3泊4日)が始まる。

縦走には白雲岳避難小屋・忠別岳避難小屋・ヒサゴ沼避難小屋といった無人小屋とテント場が点在しており、本州のような有人小屋・予約食事のシステムは大雪山系には存在しない。食料・寝具・水・コンロを自分で背負って歩くスタイルが前提となる。日帰り旭岳ピストンと、数日かけた縦走では、装備の前提が全く異なる。

夏でも雪渓、旭岳の装備と服装

旭岳の装備で気をつけたいのは、本州の同標高帯(2,300m級)とは異なる雪渓と気温の残り方だ。緯度43度・氷河期遺存の地形ゆえに、夏の最盛期でも稜線上には雪渓が複数残る。7月でも姿見駅周辺で雪が見られることがあり、9月中旬には早くも初雪が降る年もある。山頂の夏季平均気温は10℃前後、強風時の体感は氷点下に近い。

旭岳の服装は、化繊またはメリノの長袖、フリースか化繊インサレーション中間着、防水透湿のレインジャケットとレインパンツ、手袋、ニット帽までを基本セットとする。靴はくるぶしを覆うトレッキングシューズが基本で、軽アイゼンは7月初旬までと9月後半以降は携行を勧めたい。地獄谷直下を通過する区間は硫化水素を含む火山ガスが滞留することがあり、ガスの強い日には湿らせたバンダナを口元に当てる準備をしておきたい。水場は姿見駅と山頂の間に存在しないため、最低2Lを担ぎ上げる。

旭岳の時期、日本一早い紅葉

旭岳の登山時期は6月下旬から10月中旬まで。最盛期は7月から8月で、稜線のチングルマ・エゾノツガザクラ・コマクサといった高山植物が花期を迎える。9月に入るとすぐ紅葉が始まり、9月中旬は日本で最も早く紅葉が見られる場所のひとつとして、本州・関東圏からの登山者も多くなる。10月に入ると初冠雪、10月中旬以降は冬山装備が必要となる。

冬の旭岳はスキーヤー・スノーボーダーの聖地でもあり、ロープウェイは通年運行している。ただし冬の登山対象としての旭岳は、強風・低温・視界不良が複合する厳冬期登山であり、夏のハイキングの延長で考える範疇にない。バックカントリースキーで姿見駅から旭岳の山腹を滑るパウダーランは、雪質の良さで世界的に知られている。

気象庁の旭岳噴火警戒情報は出発前夜と当日朝の両方で確認したい。レベル1(活火山であることに留意)でも、地獄谷周辺の遊歩道に局所的な立入制限が出ることがある。旭岳温泉のビジターセンターでは最新情報が常時更新されている。

山頂、そしてカムイミンタラを見渡す

山頂は東西に細長い火口縁の一角で、北海道の最高点を示す標識が立つ。晴れていれば、北東に北鎮岳と黒岳、東に白雲岳と忠別岳、南東にトムラウシ山と十勝連峰、はるか遠くに知床連山と日高山脈までを見渡せる。これだけ広大な火山群がひとつの視界に入る場所は、日本では大雪山系のほかにない。山頂滞在中も地獄谷からの蒸気は途切れず、自分が活火山の上に立っている事実を耳と鼻から思い出させる。

下山後の旭岳温泉には数軒の温泉宿があり、日帰り入浴も可能。湯は無色透明の単純硫黄泉で、登山後の体に染みる。次に大雪山系を歩くなら、ロープウェイで黒岳側からアプローチして北鎮岳との縦走、あるいは数日かけて白雲岳〜トムラウシまでの大縦走に進むのが自然な流れになる。

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