関東最高峰、奥日光の屋根
日光白根山は栃木県日光市と群馬県片品村の県境に位置する標高2,578mの活火山で、関東地方の最高峰、そして日本アルプス以東の最高峰という二つのタイトルを持つ。深田久弥の日本百名山では「奥白根」の名で記され、奥日光から尾瀬・武尊山に至る一帯の中心的な存在として扱われる。北側の鬼怒沼湿原、南東の中禅寺湖、南西の丸沼・菅沼・湯ノ湖といった湖沼群は、いずれも日光白根山の火山活動が地形を作った結果生じたもので、登る前と後では奥日光の景観の見え方が大きく変わってくる。
日光白根山ルート、四方からの登り
日光白根山ルートは主に4本ある。最も人気が高いのは群馬県側の丸沼高原ロープウェイコース(山頂駅、標高2,000m発)で、登り約2時間半、下り約2時間。ロープウェイで一気に標高2,000mまで上がれるため、標高差わずか578m。鹿除けゲートを抜けて樹林帯を進み、森林限界を抜けた先で山頂直下の岩稜帯に至る構成だ。
北西側の菅沼コース(菅沼茶屋、標高約1,735m発)は登り約3時間、下り約2時間半。弥陀ヶ池を経由して山頂に至る構成で、ロープウェイ運行時間に縛られず歩ける。栃木側の湯元コース(奥白根山ルート)は湯元温泉から外山鞍部・前白根山を経由する縦走路で、登り約5時間。最も標高差・距離ともに大きく、本格的な登山者に選ばれる。さらに東側の五色沼を絡めた周回コースも組める。一般登山者は丸沼ロープウェイか菅沼から登るのが標準的だ。
日光白根山アクセスと丸沼ロープウェイ
日光白根山アクセスは、ロープウェイを使う群馬県側と、湯元温泉・中禅寺湖側を経由する栃木県側で大きく異なる。群馬県側からは関越自動車道沼田ICから国道120号で丸沼高原まで約1時間。マイカーが基本で、丸沼高原センターステーション駐車場(無料・約1,500台)から日光白根山ロープウェイで山頂駅へ約15分。栃木県側からは東武日光線で東武日光駅、東武バスで湯元温泉まで約1時間半、湯元から登山口まで徒歩で進む。
丸沼ロープウェイは登山シーズン(5月下旬から11月上旬)と冬のスキーシーズンの両方で運行される。登山シーズンの始発は7時、最終下りは16時前後で、これが日帰り登山のタイムリミットを決める。標準コースタイムでは余裕があるが、ロープウェイ最終便を逃すと丸沼高原まで歩いて下る必要があり、追加で2〜3時間を要するため、午後の天候悪化を見越して早めに動くのが賢い計画になる。
弥陀ヶ池、五色沼、火口湖の物語
日光白根山の魅力は山頂直下の二つの火口湖、弥陀ヶ池と五色沼にある。弥陀ヶ池は標高2,265mに位置する小さな池で、菅沼コースから山頂を目指す途中に立ち寄れる。五色沼は山頂の東側、標高2,170mに位置する大きな火口湖で、湯元コースまたは座禅山の鞍部から下りて到達できる。山頂と二つの火口湖をすべて回る周回プランは、コースタイム5〜6時間、距離約8kmで、関東の百名山のなかでもっとも変化に富むハイクの一つに数えられる。
山頂直下の最後の30分は火山礫の急斜面と岩塊の積み重なりで、両手を使う場面もある。雨後と早朝の凍結時には特に滑りやすく、慎重な足運びが必要になる。最高点周辺は10m四方ほどの狭い岩塊で、晴れていれば全方位の視界が開ける。
日光白根山の装備と服装、季節
日光白根山の装備は、標高2,578mの活火山を歩く前提で組む。夏でも山頂気温は10℃前後、強風時の体感は5℃を切る。化繊またはメリノの長袖、フリースか化繊インサレーション中間着、防水透湿のレインジャケットとレインパンツ、薄手の手袋、ニット帽までを基本セットとする。靴はくるぶしを覆うトレッキングシューズが必須で、特に山頂直下の岩稜帯と下山時の砂礫斜面ではグリップが効くソールが重要になる。
日光白根山の服装は、標高2,500mの稜線に立つことを前提に考える。日光白根山の時期は6月上旬から11月初旬まで。最盛期は7月から9月で、コマクサ・ハクサンシャクナゲ・シラネアオイなど、白根山にちなんだ高山植物が花期を迎える。9月下旬から10月中旬の紅葉は、ナナカマド・ダケカンバ・カラマツが斜面を染め、丸沼高原のロープウェイから見上げる紅葉と山頂からの眺望が同時に楽しめる時期だ。10月末に初冠雪、11月以降は冬季閉鎖。気象庁の常時観測火山で、1872年から1873年と1889年から1890年に水蒸気噴火を起こした記録があるが、現在は噴火警戒レベル1で安定している。水場は弥陀ヶ池畔にあるが、山頂直下にはないため、最低1.5Lを担ぐ。
山頂直下の岩稜帯にはニホンザル・ニホンジカ・カモシカが頻繁に出没する。特に丸沼ロープウェイ側のゲートは鹿の食害防止のために設置されており、登山者は確実に開閉する責任を担う。山頂周辺ではニホンザルが食料を狙うこともあるため、休憩中の食料管理は厳重にしたい。
関東最高峰から見るもの、見えるもの
日光白根山の山頂からは、関東以北の主要な山岳をほぼ一望できる。北に尾瀬の燧ヶ岳と至仏山、北東に会津駒ヶ岳、東に男体山と中禅寺湖、南東に皇海山と袈裟丸連峰、南に赤城山と榛名山、南西に武尊山、西に谷川岳、北西に苗場山と巻機山。関東の百名山の半数以上を同時に視界に収められる位置に日光白根山は立っており、ここから自分が次に登りたい山を選ぶという楽しみが生まれる。
下山後の温泉は奥日光湯元温泉、丸沼温泉、または金精トンネルを抜けて中禅寺湖畔の温泉郷に立ち寄れる。湯元温泉の白濁した硫黄泉は奥日光の名湯として知られ、登山後の体を芯から温める湯として最適だ。次に奥日光・尾瀬周辺の山を続けるなら、男体山、燧ヶ岳、至仏山が自然な選択肢になる。日光白根山に登り終えた後、「関東」という地名の地理的な広がりが視覚的に理解できるようになり、その後の登山計画の組み方が変わってくる。