山形県

飯豊山

飯豊山(いいでさん)

画像:Wikipedia(CC BY-SA)

山形・新潟・福島の三県境に長大な稜線を伸ばす、東北の屋根。標高2,105mの飯豊本山は一日で踏めず、避難小屋に泊まり、夏の残雪とヒメサユリの中を一晩か二晩歩いて初めて出会える、本州でも屈指の縦走の山である。

飯豊山という山

飯豊山は山形県、新潟県、福島県の三県境を東西に伸びる飯豊連峰の中心となる山で、標高2,105mの飯豊本山を主峰、2,128mの大日岳を連峰最高峰とする。深田久弥の日本百名山に選ばれている。火山起源ではなく、隆起と侵食によって形成された花崗岩の山稜で、北アルプスや東北の他連峰と比べてもとくに長大な稜線を持ち、登山者の間では「東北の主(あるじ)」「東北の屋根」と呼ばれてきた。

古くから飯豊修験の聖地で、福島県喜多方市の山麓に総本社の飯豊山神社を構える。江戸期までは「飯豊登拝」と呼ばれた修験道の修行登山が盛んで、現在の登山道の多くも、もとは参道として開かれた信仰の道である。山頂直下に飯豊山神社奥宮が今も残り、夏の本山小屋は実質的に神社の管理下にある。

日帰り不能、避難小屋を前提とする山

飯豊山の最大の特徴は、どの登山口からも本山までの片道だけで標準コースタイム10時間前後を要し、現実的に日帰りができないことだ。麓と山頂の標高差は約1,800m。途中に商業的な山小屋は一軒もなく、稜線上に点在する避難小屋(無人小屋、寝具・食事提供なし、トイレと水場のみ)を使って1〜3泊する前提で計画を組む。

避難小屋は宿泊料を協力金として支払う運用で、本山小屋・切合小屋・三国小屋・御西小屋・梅花皮小屋・門内小屋などが連峰全域に配置されている。夏のピーク期は管理人が常駐するが、シュラフ・マット・食料・水は基本自分で運ぶ。これは登山経験のない人がいきなり挑むべき山ではないという意味でもあり、飯豊が「初心者向けでない百名山」の代表格に挙げられる理由だ。

登山道を選ぶ — 川入、大日杉、弥平四郎、大石

飯豊山の主要登山口は四つある。最も古く、信仰の山として歩かれてきたのが福島県喜多方市側の川入(かわいり)コースで、御沢野営場を起点に三国岳避難小屋・切合小屋を経て本山小屋へ抜ける道筋。1泊2日が標準で、稜線に出るまでの長い樹林帯と急登が体力試金石になる。

山形県飯豊町からの大日杉(だいにちすぎ)コースは、ザンゲ坂・地蔵岳を経て切合小屋に合流するルートで、川入と並ぶ古典。福島県西会津側からの弥平四郎は三国岳経由で長く、新潟側の大石は御西岳に直接突き上げて連峰最高峰の大日岳に最短アプローチできる。

もっとも贅沢な楽しみ方は、飯豊連峰の縦走だ。本山から御西岳・烏帽子岳・梅花皮岳・北股岳・門内岳をつなぐ稜線は標準で2〜3日、テント装備でじっくり歩くなら4日を要する。飯豊山のルート選びは、初訪なら川入か大日杉のピストン、再訪以降に縦走へ広げていくのが現実的だ。

ヒメサユリと残雪、夏の二重奏

飯豊の山開きは例年7月上旬の「飯豊山開山祭」で、これより前は残雪が稜線を覆い、避難小屋も未開放となる。山開き直後から7月中旬にかけて、稜線一帯にヒメサユリ(オトメユリ)が咲く。淡いピンクの花が雪渓と並ぶ景色は、飯豊と朝日連峰でしか出会えない夏の景観で、写真家と健脚の登山者が集中する時期にあたる。

7月下旬以降は雪渓が縮小し、ニッコウキスゲ、ハクサンイチゲ、コバイケイソウ、シナノキンバイなど高山植物の盛期に入る。8月の盆過ぎから雷雨が増え、9月になると本山周辺は早くも秋の気配。10月初頭の紅葉はブナの黄とウラジロヨウラクの赤が美しいが、冷え込みが厳しく、本山小屋の閉小屋(10月中旬)までが事実上の登山シーズンになる。

装備と心構え、避難小屋の流儀

飯豊山の服装と装備は、北アルプス南アルプス並みに本気で組み立てる必要がある。テント1〜2泊分の重荷を背負い、稜線を10時間歩ける体力が前提となるからだ。雨具上下、フリース、ダウン、防水ザックカバー、ヘッドランプ予備、ガスバーナーと食料、寝袋とマットは全員が個別に持つ。

避難小屋運用の流儀として、満員の場合は譲り合いとシュラフ単位での詰め込み、ストーブ類は屋外、トイレチップは現金で支払う、ゴミと水・食事の管理は完全自己責任、というのが共通ルール。混雑期の本山小屋は床面積に対して50人を超える日があり、テント泊装備に切り替える判断が大切だ。

飯豊山の登山では雷と雷雲も大きなリスクで、稜線の遮蔽物はほとんどない。気象庁の雷ナウキャストを朝必ず確認し、午後の早い時間に小屋に入る計画を立てる。雪渓のトラバースは6月から7月中旬にかけて要注意で、ピッケルと軽アイゼン、滑落停止の心得がない人はこの時期を避けたほうがよい。

山頂からの眺め、そして信仰の山として

飯豊本山の頂から見る稜線は、東北の山では群を抜いて長い。東に磐梯山と吾妻連峰、北に朝日連峰、西に日本海、南に越後三山。本山小屋から本山ピークまでは10分弱、御来光と朝焼けの稜線を見るためだけに小屋泊する価値がある景色だ。

もう一つ、飯豊登山が他の百名山と少し違うのは、現在も実質的に修験道の山であることだ。本山小屋の管理は飯豊山神社が関わり、夏期に神職が登拝することもある。一夏かけて連峰を歩き通す行為は、観光的なピークハントというよりは東北の山岳信仰の流れに身を置く体験に近い。日本百名山の中でも、登り終わって帰路で「もう一度、もっと深く歩きたい」と感じさせる山は限られる。飯豊はそのひとつである。

飯豊山の天気予報(3日間)

天気予報を読み込み中…

飯豊山のコミュニティ

コミュニティを読み込み中…

飯豊山に関連する山

飯豊山の近くの山

1,636m

杁差岳

えぶりさしだけ・18km

1,420m

二王子岳

にのうじだけ・18km

1,417m

祝瓶山

いわいがめやま・28km

山形県の他の山

吾妻山 2,035m

吾妻山

あづまやま

月山 1,984m

月山

がっさん

1,871m

朝日岳

あさひだけ

飯豊山に関連する記事

YAMATOMO

飯豊山の登山仲間と出会う

YAMATOMO は、山ごとに常設のベースキャンプを持つ登山コミュニティアプリ。飯豊山に登る予定の人・登った人と、天気・コンディション・ルートをリアルタイムで共有できます。

App Store でダウンロード マップで飯豊山を見る → ベースキャンプに参加する →