兵庫県

六甲山

神戸の街並みのすぐ背後に立つ、関西を代表する『街と一体化した山』。山頂の夜景、麓の有馬温泉、56kmの全山縦走を、一つの山系が同時に提供する。

神戸の街と一体になった山

六甲山は兵庫県神戸市・芦屋市・西宮市・宝塚市の四市にまたがる山系で、最高峰は神戸市東灘区と北区の境にある標高931.25mの六甲最高峰。神戸の市街地から見上げると稜線が常に視界の上端を占めており、市街地と山が物理的に一体化している関西を代表する『街の山』だ。山系全体は東西に約30km、南北に約5kmにわたって連なり、麓には有馬温泉、山頂部には六甲ガーデンテラスや六甲ケーブルなど観光施設が並ぶ、登山と観光と生活が同居する稀有な構造を持つ。

六甲山の登山文化は明治期に外国人居留地の開発と結びついて始まった。イギリス人実業家アーサー・H・グルームが明治27年(1894年)に山頂域に別荘を建て、日本で最初のゴルフ場・神戸ゴルフ倶楽部を造成。日本人による『毎日登山』の習慣も同じ時代に再度山(ふたたびさん)周辺で生まれ、現代に続く関西の登山文化の原点となっている。標高931mとは思えないほど、歴史と人の手が積み重なった山が六甲山だ。

六甲山ルート、選択肢の多さ

六甲山ルートは全山縦走路だけで100を超える登山口を持つ。最も歩かれているのは芦屋川駅から入るロックガーデン中央稜ルート(高座の滝登山口、標高約70m発)。芦屋川駅から登山口まで徒歩約20分、登山口から風吹岩・雨ヶ峠・七曲りを経て最高峰まで登り約3時間30分。日本の近代登山発祥の地ともされるロックガーデンは花崗岩の岩場をクサリと足場を使って登る入門ルートとして大正期から親しまれてきた。

もう一つの定番が、有馬温泉側から登る魚屋道ルート(ととやみち、有馬温泉駅近く・標高約350m発)。有馬から最高峰まで約2時間。江戸期に阪神側の漁師が魚を担いで有馬温泉まで運んだ古道で、距離12km・標高差580m。下山に使えば登り終えてそのまま有馬温泉に下りて湯に浸かれるという、六甲山ならではの黄金パターンが完成する。

本気で歩くなら六甲全山縦走に挑むことになる。須磨浦公園(須磨海岸近く、標高0m)から鉢伏山・栂尾山・横尾山・須磨アルプス・高取山・摩耶山・記念碑台・六甲最高峰・宝塚駅までを結ぶ全長約56km、累積標高差約3,000mの長距離ルート。神戸市が主催する全山縦走大会が年3回開催され、一日で56kmを歩き切る挑戦は関西ハイカーの究極の腕試しになっている。

六甲山アクセス、街から登る

六甲山アクセスは、登山対象として日本で最も街から近い山の一つだ。神戸三宮駅から芦屋川駅まで阪急電車で約15分、芦屋川駅から徒歩で直接登山口に立てる。電車の改札から登山口まで20分、登山口から山頂まで3時間30分という構造で、東京で言えば高尾山と奥多摩を足したような近接性を持つ。新幹線で大阪・京都・名古屋からのアクセスもすべて2時間圏内に収まる。

観光客向けには、新神戸駅近くから出る六甲ケーブル(六甲ケーブル下駅 → 六甲山上駅、約10分、所要約450m)、または表六甲ドライブウェイ経由で車でも山上まで上がれる。山上の六甲ガーデンテラス・六甲山牧場・六甲オルゴールミュージアムなどは観光施設として独立して機能しており、登山者と観光客が並走する独特の山域構成になっている。

ロックガーデン、芦屋川、毎日登山

芦屋ロックガーデンは、花崗岩の風化した岩塊が露出した尾根で、大正13年(1924年)に近代日本最初の本格的ロッククライミングが行われた場所として知られる。「ロックガーデン」という日本語名そのものが、ここで生まれた。今でも休日には数百人のハイカーが芦屋川駅から登山道に入り、岩場を抜けて風吹岩で休憩し、最高峰または横池方面に向かう光景が日常風景になっている。

六甲山のもう一つの文化が「毎日登山」だ。再度山周辺で明治期に始まった、毎朝出勤前に山を一往復する習慣が現在も続いており、再度山・摩耶山・市ヶ原などの登山口には『毎日登山』を続ける常連層の名前が刻まれた小さな碑が並ぶ。神戸の山岳会・労山系の組織がこの習慣を支え続けてきた経緯があり、六甲山は単に登られる山ではなく、毎日登られる山として、登山という行為の質そのものが他の山と少し違う。

100万ドルの夜景、有馬温泉、六甲おろし

六甲山系の象徴は『100万ドルの夜景』だ。摩耶山山上の掬星台、または六甲最高峰近くの天覧台から見下ろす神戸・大阪湾の夜景は、日本三大夜景の一角として知られる。標高600m〜900m級の山上から、平地に広がる海岸都市の灯りを真下に見下ろす構図は、六甲山ならではのもの。函館や長崎の夜景とは『街との距離感』がまるで違う。

山系の北側、六甲山の麓には有馬温泉が湧く。日本三古湯の一つとして奈良時代から知られ、赤褐色の含鉄食塩泉「金泉」と無色透明の炭酸泉「銀泉」が二大泉質。六甲山に登ったあと、魚屋道で有馬温泉に下りて湯に浸かり、有馬から神戸電鉄・神戸高速で三宮に戻るというルーティンは、関西ハイカーにとって最高の一日のフォーマットとして定着している。

冬の六甲山に吹き下ろす北西の強風は『六甲おろし』と呼ばれ、阪神タイガースの応援歌のタイトルにもなっている。山系の地形が大阪湾からの空気の流れを大きく左右しており、神戸の気候そのものに直結する存在として、六甲山は単なる山以上の地理的な意味を持つ。

六甲山の装備、服装、季節

六甲山の装備は、選ぶルートで大きく変わる。ロックガーデン中央稜や芦屋川からの一般ルートなら、ミッドカットのトレッキングシューズと20Lザックが標準。ロックガーデンの岩場では足元の安定性と摩擦の強いソールが必要だ。長袖、薄手フリース、防水透湿レインジャケットを基本セット。冬は六甲おろしの強風で体感気温が一気に下がるため、ウィンドシェルが必須装備に格上げされる。

六甲山の服装と季節について、推奨される登山シーズンは1年を通じて。最も人気が高いのは春の新緑(4月〜5月)、秋の紅葉(11月)、冬の夜景観賞(12月〜2月)。夏は標高が低く湿気が多いため、早朝出発と熱中症対策が必須になる。1月から2月に標高600m以上で部分積雪・凍結があり、チェーンスパイクの携行が安心。水場は登山道上にあり、山上の施設でも飲料が買えるため、行動水は1L程度で構わない。全山縦走に挑戦する場合は飲食ポイントを事前に把握しておく。

アーサー・H・グルームは1846年生まれのイギリス商人で、神戸の外国人居留地で活動した実業家。1894年(明治27年)に六甲山頂域に別荘を建て、1903年(明治36年)には日本で最初のゴルフ場「神戸ゴルフ倶楽部」を開設した。六甲山が観光地・避暑地として開発された原点はこのグルームの活動にあり、現在の山頂域の道路網・施設群はすべてこの近代化の流れの上に立っている。グルームの胸像は山上の記念碑台に立つ。

摩耶山、再度山、そして全山縦走

六甲最高峰を踏んだ次の選択肢は、稜線続きの摩耶山(702m)再度山(470m)だ。摩耶山は掬星台からの夜景観賞で人気、再度山は毎日登山発祥の聖地として常連層が集う。両者を含む全山縦走(須磨浦 → 摩耶 → 最高峰 → 宝塚)は10〜12時間の長距離ハイクで、六甲山系を一本につなぐ経験は他では味わえない。

視野を関西全体に広げれば、東に金剛山・葛城山、北に大江山・氷ノ山、西に氷ノ山と関西の主要山域がすべて2時間圏内にある。六甲山はその関西の山岳ネットワークの『街側の入口』として、都市と自然を切れ目なく繋ぐ希少な山として、登山初心者から本格派まで、世代を超えて愛されている。

六甲山の天気予報(3日間)

天気予報を読み込み中…

六甲山のコミュニティ

コミュニティを読み込み中…

六甲山に関連する山

六甲山の近くの山

702m

摩耶山

まやさん・4.8km

642m

生駒山

いこまやま・39km

924m

愛宕山

あたごやま・47km

兵庫県の他の山

1,510m

氷ノ山

ひょうのせん

915m

雪彦山

せっぴこさん

六甲山に関連する記事

YAMATOMO

六甲山の登山仲間と出会う

YAMATOMO は、山ごとに常設のベースキャンプを持つ登山コミュニティアプリ。六甲山に登る予定の人・登った人と、天気・コンディション・ルートをリアルタイムで共有できます。

App Store でダウンロード マップで六甲山を見る → ベースキャンプに参加する →